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最高裁判所第二小法廷 昭和29年(あ)3062号 決定 1957年2月20日

本籍並びに住居

山梨県西八代郡富里村常葉六八八一番地

農業

佐野徳良

大正五年一月一五日生

本籍

静岡県磐田郡東浅羽村初越四五番地

住居

同県沼津市平町一一八の二番地

土木請負業

村井太右ヱ門

明治三三年一〇月二七日生

被告人佐野徳良に対する賍物故買、賍物収受、賍物牙保、被告人村井太右ヱ門に対する業務上横領、火薬類取締法違反各被告事件について昭和二九年八月四日東京高等裁判所の言渡した判決に対し各被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件各上告を棄却する。

当審における訴訟費用(国選弁護人に支給した分)は被告人佐野徳良の負担とする。

理由

被告人佐野徳良の弁護人太田常雄、同山本耕幹の上告趣意第一点は、判例違反を主張する点もあるが、いずれも原審において主張がなく原判決の判断を示していない事項に関するものであつて、適法な上告理由とならない。同第二点は量刑不当の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。同被告人の弁護人佐々木清綱の上告趣意は、原審公判調書に公開法廷において開廷された旨の記載がないから公判が公開法廷においてなされたか否か確認することができないとして、憲法八二条違反を主張するが、裁判が公開法廷においてなされたことは刑訴規則四四条により公判調書の必要記載事項とされていないのであるから、公判調書にその点の記載がないからといつて公開されなかつたということはできない。むしろ同条八号の「公開を禁じたこと及びその理由」の記載がない以上公開されたものと推定すべきであり所論の主張も本件の公判が公開されなかつたと主張するものとは解せられないのであつて、所論違憲の主張は、前提を欠き適法な上告理由とならない。被告人村井太右ヱ門の弁護人鈴木俊蔵の上告趣意は違憲をいう点もあるけれども、量刑不当の主張を出でないものであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四一四条、三八六条一項三号、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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